ことしのゆうばり国際ファンタスティック映画祭は、例年よりも1週間遅い開催。初日3月2日の夕張は穏やかな天気だった
▼1997年から、毎年夕張を訪れ、映画祭に参加してきた。正確には、2007年を除いてだ。この年、夕張市は財政破綻し、映画祭は中止された。しかし、08年市民主体のイベントとして復活し、ことし10回目を迎えた。開会式では、夕張再生のイメージ映像「リスタート」が上映された。夕張市民の熱意が伝わってきた。映画祭は、夕張を応援してきたが、ことしは夕張の再出発を強調する映画祭となった。鈴木直道夕張市長は映画祭の最終日3月6日が、10年前に夕張市が財政再建団体に認定された日であるとあいさつし、10年という節目に夕張の再生「リスタート」を訴えた
▼オープニング上映は、神山健治監督・脚本のオリジナル劇場アニメ「ひるね姫~知らないワタシの物語~」。倉敷市で父親と2人で暮らしている女子高生・森川ココネの見る夢が、現実とつながっていく。東京オリンピックを3日後に控えた20年の夏の日、突然父親が逮捕されて、物語は大きく動きだす。テーマは、自動車運転をめぐる価値観の対立。ミステリアスな物語は、圧感の映像美で締めくくられる。最後は小さな町工場の情熱と技術が、日本を代表する自動車会社を救う。ハードよりもソフトが大切になる、これからの時代を象徴する結末だ
▼夕張市民の果敢な取り組みが、日本を救うかもしれない。映画を見て、そんなことを考えた。日本こそ「リスタート」が必要なのだから。