西日本を中心に5日から降り続いた雨で各地に甚大な浸水被害が出ている映像をニュースで見て、東日本大震災で町が津波にのみ込まれる場面の記憶がよみがえった
▼九州から中国、四国、近畿とこれだけ広範囲に数日間、豪雨が集中すれば被害は津波と変わるところがない。ただ水は海でなく空から来るため、より頻繁で予測も立てにくく対応は難しい。さらに山や急傾斜地に落ちた雨は土砂崩れとなり集落を襲う。政府はきのう午前、今回の「7月豪雨」による死者が87人、心肺停止が13人、行方・安否不明が83人と発表した。残念なことだがきょうには数が変わっているだろう。被災した地域の方々の心痛はいかばかりか。お見舞い申し上げる
▼貴い人命が失われたばかりでない。家屋の損壊や農作物への影響、インフラの破壊も深刻である。こちらも全容判明には時間がかかりそうだ。それにしても今回の降り方は尋常でない。温暖化の影響なのだろうが、ここ20年ほどで雨は津波と見まごうほどになった。同種の災害が起こるたび思い知らされるのは、この変化に社会が追い付いていない事実である。極端な言い方になるが防災の国土づくり、まちづくりの基本構造が昭和のままなのでないか。山間の集落しかり、宅地開発しかり
▼最も懸念されるのが治水事業である。近年は回復傾向にあるが、公共事業悪玉論を受けてやはり20年近く前から予算が削られ続けた。これは地方から水防の知識や技術を持つ人が失われたことをも意味する。水害大国日本は今、大きな曲がり角に来ているのかもしれない。