黄金週間が始まった。初日のきょうは「昭和の日」である。もともとは昭和天皇の誕生日。今では「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」日だそう
▼随分と仰々しい物言いだが、この高齢化社会の中で、古き良き昭和の価値に心を寄せる人は実際増えているように見える。貧しくも人情味あふれる昭和を描いた映画『ALWAYS 三丁目の夕日』のヒットもその表れだろう。昭和を語るうえで忘れるわけにいかないものの一つにテレビがある。先の映画にも、普及に大きな役割を果たした東京タワーの建設風景があった。覚えている人もいよう
▼テレビ放映が開始された1953年にNHKの専属俳優となった黒柳徹子さんが、雑誌『ダカーポ』で以前語っていた。当時の普及台数は全国で866台。新卒の月給が9000円の時代に、1台25万円もしたそうだ。ところがいったん世に広まると、政治経済はもとより、ありとあらゆる分野に底知れぬ影響を及ぼしていく。東京五輪に歓声を上げ、全員集合で笑い、ロッキード事件に怒り、御巣鷹山墜落事故に泣いた。テレビが社会に「一億総」の雰囲気を作ったのである。続く平成はインターネット全盛のいわば「一億各」時代。皆一緒の昭和世代には少々寂しいがこれも世の流れだろう
▼その平成も天皇陛下退位により30(2018)年で幕を閉じる。特例法案が来月中にも成立する見通しになったらしい。さて「平成の時代」をいつか顧みるのは今の若者たち。悲哀とともに思い出すのでなければいいが。