ことしは前線の進み具合がちょうど良かったらしく、ゴールデンウイークにかけ道内多くの地域で桜が見頃を迎えた。天気にも恵まれたから花見に繰り出した人も少なくなかったろう
▼当方は花より団子というわけで、知り合いに誘われるまま旭川の山でギョウジャニンニク採りを楽しんだ。こちらも時期がちょうど良かったようで、斜面にみっしり群生し、まさに採り頃。ほくほくしながらたっぷり袋に詰め込んだ。本道で山菜の王様とも称されるギョウジャニンニクは、かなり古くから食べられていたようだ。アイヌ民族の昔話にも時折出てくる。例えば人間の魂が神の国に行くために、あの世のギョウジャニンニクを持ってこの世に出てくる話
▼また、根こそぎ採られたことに怒ったギョウジャニンニクの神が、村おさの妻を病気にして殺してしまう話もあった。山の恵みの中でもとりわけ大切にしていた証しだろう。食材としてはもちろん、薬代わり、さらには魔よけにもなったと聞けばそれもうなずける。実際に薬効があるのかどうかは知らないが、ギョウジャニンニクに限らず山菜を食べると山の力を分けてもらったようで元気が出る。これから初夏にかけてはこれまた山の精気をたっぷり含んだタケノコやフキ、ウド、ワラビ、コゴミの出番だ
▼かつて読んだアイヌの古老のこんな言葉を思い出す。「冷害でも困ることはないさ。昔みたいにその辺にあるもの食べれば生きていけるから」。桜の開花を合図に、山菜が次々と食べ頃を迎える。本道の豊かさを実感できる季節がまた巡ってきた。