少し前のこと、母子家庭に暮らす女子高生の生活をテレビが伝えているのを見た。番組名は覚えていないのだが彼女には小学生の弟と妹がいて、家計を助けるためアルバイトを2つ掛け持ちしながら弟妹の世話もしているということだった
▼母親も生活費を工面するため朝早くに家を出て、夜遅くに帰る働き詰めの毎日らしい。決して楽とはいえない暮らしぶりと彼女のけなげさには、ため息が出た。現代の話である。厚生労働省の「ひとり親家庭等の現状について」(2015年)によると、母子世帯の平均年間就労収入は181万円で一般世帯の4割弱。就業率は高いものの、非正規の仕事が多いため収入は低いそうだ。仕事を掛け持ちしてやっと生活できるわけである。子どもが小さければなおさらだろう
▼相対的貧困率は54.6%と、実に半分以上の世帯が貧困という現実。母子世帯になる理由のほとんどは離婚だが、死別も8%程度ある。大黒柱を突然失うことでもたらされるのは悲嘆だけではないのだ。道内で死亡労災が多発している。中でも建設業での発生が目立つ。道労働局の統計では、16年に全産業で77人(前年比21人増)が死亡。このうち建設業が30人(5人増)を占めたという
▼新たに母子家庭をつくってしまった例もあったのでないか。悲しみに暮れながら生活の心配も。残された家族には酷な話である。同局は先頃、関係団体と死亡労災撲滅に向けた緊急共同宣言を表明した。来月30日まで集中的に対策を実施するそうだ。無事でいることは家族を守ること。今一度胸に刻みたい。