カジノを含む統合型リゾート(IR)整備法が成立した。政府はこれによって日本の観光立国化をもう一段階引き上げる狙いだが、どうやら世間の評判はあまり芳しくないようだ
▼共同通信が21、22の両日実施した世論調査でIR整備法に「反対」する人は64.8%、読売新聞の同日程の調査でも「評価しない人」は62%に上ったという。これまでにない賭博施設なだけに、ギャンブル依存症など懸念を抱く人も多い。実に健全な反応ではないか。ただ競馬、競輪、競艇、パチンコと、賭け事の場は既にたくさんある。大部分の人にとっては単なる娯楽にすぎない。とするとカジノだけ問題視するのも整合性に欠ける
▼競馬好きだった小説家吉川英治が随筆「競馬」で社会に害ありと認めながらこう指摘していた。「競馬場の熱鬧は、そのままが、人生の一縮図だと、観るのである。あの渦の中で、自己の理性を失う者は、実際の社会面でも、いつか、その弱点を、出す者にちがいない」。氏の鋭い人間観察である。賭博で身を持ち崩す人はそれがなくてもどこかで道を誤るから、本質は賭博にはないというわけ。氏は右ポケットにその日使うお金を入れて出掛け、勝つと左に収めた。右が無くなると帰ったという。要は節度
▼とはいえ射幸心もばかにできない。新法ではカジノに預託金を積めば無利子で貸し付けを受けられる。右ポケットが膨らみ続ければ歯止めが効かなくなる人も出よう。国民が納得する仕組みを整備しなければカジノに市民権が得られないばかりか、政府はIRを元も子も失うことになる。