一本しかない大切な仕事道具のおのを誤って川に落としてしまったきこりの前に、一人の女神が現れこう尋ねた。「あなたがなくしたのはこのおのですか?」。見ると持っているのは光り輝く金のおの。イソップ童話の一つ「金のおの」である
▼きこりがうそをつかず鉄のおのと答えたため、その正直さを喜んだ女神が金と銀のおのも贈ったのはご存じの通り。もっとも鉄でなければ木を切る役には立たないわけだが。さて、こちらも誤って記憶を川に落としてしまったのか、それとも知らぬふりをしていたのか。民進党の蓮舫代表のことである。「あなたは二重国籍でしたか」との問いに、長らく「自分の国籍は日本のみ」と答えていた
▼蓮舫氏はおととい記者会見を開き、戸籍謄本などを公表して謝罪した。昨年まで台湾籍が残っており、初当選した2004年参院選の選挙公報に書いた「1985年、台湾籍から帰化」が事実でなかったことをあらためて認めたのだ。川の女神も有権者もがっかりではないか。今回の件では一部マスコミや識者から、戸籍の公表は出自による差別を助長するとの声も挙がっているが考えすぎだろう。野党第一党の代表として、有権者と法に対しての誠実さや政治倫理が問われているだけ。勘違いに気付いてからも説明責任を果たそうとしなかった蓮舫氏が自ら招いた事態である
▼さて童話は後から強欲なきこりが出てきて、金のおのこそ自分の物だとうそをつき何もかも失ってしまう。蓮舫氏の場合だと信頼だろうか。氏と民進党がそれを取り戻すのは容易ではない。