おいしい物が嫌いな人はそういないだろう。グルメ(食通)とまではいかずとも、西に評判のラーメンがあると知ればすぐに駆け付け、東に極上のスープカリーがあると聞けば出掛けて行く。情報には事欠かない世の中である
▼ところで料理は家庭からフレンチ、懐石まで数限りなくあるが、洋の東西を問わず味の要は塩だという。素材の良さを引き出し、全体の味を調える。生かすも殺すもさじ加減一つなのである。「塩は百肴の将」ともいう。しょうゆやみそといった調味料も塩なくしてはできないため、塩こそが全ての料理の頂点に立つとの意味。だしのうまみを感じる味覚にも塩が大きな役目を果たしている。なかなかの働き者でもあるのだ
▼来月予定の自民党総裁選に石破茂元幹事長が出馬を表明し、盛んに支持拡大のためのPR活動を繰り広げている。立候補者が安倍首相だけで無投票当選になる全く味気ない総裁選も予想されていたが、石破氏という将たる塩が入ったことでだいぶ味も引き締まった。党内の選挙とはいえ実質は首相を選ぶ手続きだから国民の関心が低いのはよろしくない。石破氏は「国民の思いに近い政治」を掲げて戦うようだ。対立候補が出て意見をぶつけ合うことで首相の意気込みや方針も自然と鮮明になろう
▼ただ総裁選を少しおいしくはしてくれたものの、失礼ながら今のところ石破氏に肉や魚といった主役級食材の風格は感じられない。まあ、安倍首相の出馬表明もまだだから本領発揮はこれからだろう。あまり塩を効かせ過ぎて食えない総裁選にだけはしないように。