もう20年近く前の話だが、宮之浦岳を登山がてら縄文杉を見るため屋久島を訪れたことがある。淀川登山口から荒川に縦走するルートで、日程は2泊3日
▼本道とは趣を異にする山容や樹齢数千年といわれる杉の巨木、こけむした深い森には胸を打たれた。ただ、全行程のうち雨に当たらなかったのは最初と最後の数時間のみ。さすがに「屋久島では、1カ月に35日雨が降る」と聞かされただけあると感心したものだ。もちろん「1カ月に35日」は大げさだが、東京や仙台に暮らす人もそろそろそんな気分にとらわれているのでないか。両地域とも記録的長雨に見舞われている。東京では今月1日からきのうまで17日、仙台でも7月22日からきのうまで27日連続で雨が降ったそうだ
▼「水面に刺さる一瞬水ならず輪をひらきつつ走る雨脚」時田則雄。そんな光景が毎日のことらしい。特に東京では統計開始以来2番目、8月としては22日連続して降った1977年に次ぐ長さとのこと。かなりうっとうしい記録だが。雨だけでなく日照不足と低温も困りものだ。関東では野菜が値上がりを始め、夏物商戦やレジャーも軒並み低迷していると聞く。消費は湿るばかりだろう
▼内閣府は先頃、ことし4―6月期のGDP速報値を発表した。実質で前期比1.0%増、年率換算で4.0%増と好調だった。けん引役の一つは個人消費である。それがここにきて天候不順の急ブレーキ。実はこの天気、全国的な傾向という。1カ月で35日とは言わないがせめて半分は晴れてくれないと、消費も心も上向きそうにない。