その事実に伝えるべきニュース価値はあるのか、ないのか。新聞やテレビといった報道の現場では、新人記者にニュース価値の捉え方を教えるときこんな例えがしばしば使われる。「犬が人にかみついてもニュースにはならないが、人が犬にかみつけばそれはニュースになる」
▼もっともあくまで考え方の基本であって金科玉条ではない。野犬の少ない今は犬が人にかみついてもニュースになろう。価値も世につれだ。その意味ではことしがいかに異常かを物語るものだろう。天気予報以外で気象状況が連日これだけニュースに取り上げられる年もなかったのではないか。過去経験したことのない豪雨が相次いで列島を襲い、各地で観測開始以来最高を記録する気温が続出。台風は途切れることなく生まれ、強風や雷、高潮が多くの人々を悩ませる
▼「晴れ後曇り、所によっては雨」くらいでは話題にもならないが、大荒れの気象が群れを成して次々と日本にかみついてくるのではニュースにしないわけにいかない。その上この台風21号である。非常に強い勢力を保ったまま、きのう四国地方に上陸した。西日本を中心に猛烈な風が吹き荒れ、建物の損壊やトラックの横転など被害が多発したという
▼きょう午前には、暴風域を伴い本道に最接近するため札幌管区気象台でも厳重な警戒を呼び掛けている。河川の氾濫や土砂災害は雨が上がってからも起こることがあるため油断は禁物。常識が通用しない昨今の気象である。ここは命を守る行動に徹するべきだろう。悲しいニュースをこれ以上増やしてはいけない。