ことしの人気日本一を決める「ゆるキャラグランプリ」の投票結果がおととい発表され、ご当地部門で埼玉県志木市文化スポーツ振興公社の「カパル」が第1位に輝いた。市に伝わるかっぱ民話を基にした公式キャラクターだという
▼ところで今回のグランプリで話題を集めたのは順位より、一部の自治体がそれを上げるため駆使した組織票戦術だった。ネット投票のためのIDを大量に作り票を水増ししたのだとか。その自治体のゆるキャラは四日市市の「こにゅうどうくん」と大牟田市の「ジャー坊」、泉佐野市の「イヌナキン」の3体である。組織票発覚前にはいずれも100万票超えで上位3位を独占していたが、細工が明るみに出て組織票が無効になると全て2位以下に転落。4位だった「カパル」が1位に浮上した。かっぱだけに、といったところか
▼狙った結果を確実にしようと、数集めにばかり意を注いだ3市に付けが回ったということだろう。罪のない「こにゅうどうくん」らには気の毒な話だ。ただ、組織票より気になるのが相も変わらぬ自治体の入れ込みようである。「くまモン」や「ひこにゃん」は分かっても、ここ数年の1位を知っている人はほとんどいないのでないか。例えば去年の「うなりくん」(千葉県)
▼サラリーマン川柳(第一生命)にこんな句があった。「正論を吐かぬ聴かぬが出世道」。担当者も本音では疑問に思いながらも役所特有の前例主義や横並び志向に飲み込まれ、「もうやめよう」の正論が言えなくなっているのでは。ゆるキャラもゆるくないご時世である。