本を読んでいると言い得て妙だなと感心する新語に出会うことが度々ある。最近見つけたのは「嫁ブロック」だった。新たな挑戦のため会社を辞めようとするとき、妻の反対という大きな壁が立ちはだかることを表した言葉だ
▼日本の知財戦略について各分野の識者がどう考えているかをまとめた『イノベーションエコシステム ニッポンは甦る!』(甘利明、講談社)の中で、落合陽一筑波大学長補佐が使っていた。日本の抱える問題を解決するには技術革新や価値創造といったイノベーションが必要だが、身内の反対で中途半端なまま終わる例も多いと落合氏は嘆く。果敢な挑戦には悲観的な声がつきまとうものらしい
▼2025年大阪万博も23日の開催地決定から数日たち、「嫁ブロック」ならぬ「知識人ブロック」が始まっているようだ。思想家の内田樹氏はツイッターで、「『金が欲しい』以外に何の動機もない」とばっさり。「税金の無駄遣い」「経済効果など机上の空論」と厳しく批判する人もいる。建設運営費2000億円、経済効果2兆円の数字だけ見て、夢物語の巨大公共事業と判断したのかもしれない。ただ昨今の万博はかつての総合見本市でなく、人類共通の問題を解決に導く知の集積の場に姿を変えている
▼大阪のテーマも「いのち輝く未来社会のデザイン」。心身の健康や持続可能な社会経済に関する革新的なアイデアを集め、健やかな未来のためのいわば「シリコンバレー」をつくるのである。懸念も当然だが今はブロックより世界に挑戦する大阪のアタックにエールを送りたい。