サービス残業はブラック企業
「働き方改革」の推進に伴い、長時間労働の是正や仕事と生活を両立させるワークライフバランスの考え方が広まりつつある。建設業界でも、ことし3月に国土交通省が「働き方改革加速化プログラム」を策定し、週休2日の確保や書類の簡素化などに向けた取り組みを進めている。
一方で3K(きつい、汚い、危険)のイメージが若者の入職に影響を及ぼしている。近年は過酷な労働環境で働かせる会社は「ブラック企業」と見なされ、若者に敬遠される。では、若者の目にはどのような企業がブラック企業として映るのだろうか。
■労基法令違反は仕事選択に影響
「ブラック企業」について厚生労働省は明確な定義をせず、長時間労働とハラスメント(嫌がらせ)の常態化、残業代や手当未払いの違法労働を特徴として見ている。
学生には12のケースを設定してブラック企業であるかどうかを考えてもらった。
「思う」の答えが最も多かったのは「残業代や休日出勤などの手当が支払われない」の98.5%だった。次いで「社内でパワハラやセクハラが横行している」が92.4%、「サービス残業が常態化している」が91.7%を占めた。
対して「思う」が最も少なかったのは「昇進や昇給のペースが遅い」で26.3%だった。「新卒3年目以内の離職率が30%を超える」は「思う」が45.1%で「思わない」が54.9%と大きな差が出なかった。
自由回答で聞いたブラック企業のイメージでも長時間労働や残業に関する項目が多くを占めた。その他では「言動や態度で暴力をふるう」「改善を求めても何もしない」「上司が古い考えにとらわれている」などの意見が出た。
南部明学院長は「学生はニュースなどで理解しているのか、労働基準関係の法令違反に該当する項目はブラック企業と認識している」と感じている。差がつかなかった離職率については「求人票の青少年雇用情報欄には過去3年間の離職率を記入することが推奨されている。学生は仕事を選ぶ際、参考材料の一つにしている」という。
■人材不足解決へ社内交流が大切
今回のアンケートを通してさまざまな角度から若者の職業観や仕事に求めるものを探ってきた。仕事選びの軸は仕事内容以上に休日や給料といった勤務条件に重きを置いている。こうした改善は多くの企業にとって負担が大きく、簡単にできるものではないだろう。
職場の人間関係への関心も高かった。求人票だけでは分からない情報だけに学生は現場見学やインターンシップを通して感じ取ろうとする。また学生は企業で働く先輩の声が入職への大きな判断材料となるため、現役の社員が満足に働ける環境や社員間で気兼ねなく話し合える関係が重要と考えられる。
特にこの関係づくりは定着率向上や労災防止にも役立つ。社内イベントなどで社員の交流を図ることは業種や経営規模を問わず取り組める人材不足解決の第一歩となるはずだ。