世の中には気の長い人と短い人がいる。何事をするにしてもそれぞれペースが違うため、分かり合うのはなかなか難しい。そんな人間模様を面白おかしく描いた落語に「長短」がある
▼のんびり屋の長さんがせっかちな短七の長屋に遊びにきた。長さんは出されたまんじゅうを一口食べると牛のようにずっとモチャモチャ噛んでいる。まだるっこしさに耐えられなくなった短七はそれをもぎ取って丸のみし、目を白黒。次にたばこを勧められた長さん。やはり火をつけてから吸い始めるまでに延々と時間をかける。見ていられなくなった短七が言い放つ。「俺なんざ急いでるときは火がつく前に一服のんじまうんだ」。もはやたばこの意味がない
▼先週閉会した臨時国会でも、野党と政府・与党とでそんな落語が演じられていたようだ。細かい点を上げつらいなかなか審議を進めようとしない野党が長さん。それに対し法案の不備が明らかとなって議論に火がつく前に次々と採決に持ち込む政府・与党が短七である。これでは国会も正常に機能しなかろう。と思いきや、終わってみれば延長なしの会期48日間で改正入管法や改正水道法など政府の新規提出法案13本がことごとく成立。全法案が成立したのは2007年の臨時国会以来だという
▼必要な法律が遅滞なく決まるのは歓迎だが、与野党が対立を演出しながら最後はあうんの呼吸で着地させたようにも見える。先の落語でも長さんと短七はけんかばかりしているが実は仲良し。与野党も表ではいがみ合っても裏では…。まあよくできた噺、いや話なのかも。