ニュース映像で見たのだが、まだあどけなさを残す顔がいざ対局となると相手を鋭くにらむような表情に変わるのに驚かされた。9歳にして目はもう勝負師のそれ。史上最年少で囲碁棋士になることが決まった大阪市の小学4年生、仲邑菫さんの話である
▼ニュースというのはおととい東大阪市で開かれた囲碁フェスティバル。そこで菫さんは現在五冠の井山裕太棋聖と公開対局し、互角の渡り合いを演じたのだった。勝負は時間切れ引き分け。中盤以降は井山棋聖が徐々に優勢になっていったものの、序盤は菫さんが押していたという。対局後の記者会見で井山棋聖は、男女の枠を超えて「十分天下が狙える」と絶賛していた。末恐ろしい早咲きの才能である
▼3歳から本格的に取り組み始めたというが、6年あれば誰もがこの域に到達できるわけでもあるまい。やはり天与の資があるのだろう。同じく3歳で始め、6歳で近郷に敵なし、9歳で本因坊家に入門した幕末の天才棋士本因坊秀策をほうふつとさせる。それにしても知力勝負での、最近の日本の子どもたちの活躍は目覚ましい。昨年10月には神奈川県の小学5年生、福地啓介君が第42回世界オセロ選手権でチャンピオンの座を獲得した。歴代最年少である。今16歳の将棋の最年少プロ藤井聡太七段は言うに及ばずだろう
▼彼らの活躍を見ていると、日本の未来は明るいと思えてうれしくなる。本当は全ての子どもたちに天与の資があるのだ。もっと多くの子どもたちが自分の才能に気付き、力を伸ばすことができればいい。これは大人の責任である。