斜面崩壊抑制工法など新技術説明会 JSTと高専機構

2019年01月21日 15時00分

 科学技術振興機構(JST)と国立高等専門学校機構はこのほど、新技術説明会をJST東京本部別館で開いた。各高専の教授らが新技術の実用化に向けて研究成果を報告。上流部自然斜面で豪雨による浸透崩壊を抑制・保護する「ハイスイテラス工法」や、安価で印刷可能な光電変換素子と熱電変換素子を融合させたハイブリッド発電シートなどを披露した。

 香川高専建設環境工学科の向谷光彦教授は、道路の設置や山岳鉄塔の建設など人工的改変を施した森林で、表面浸食や地滑り、崩落などを防止するハイスイテラス工法を紹介した。

多様な課題の解決につながる技術を発表した

 この工法は、自然斜面の上流域で等高線に沿って水平方向に導流堤を複数段造ることで、一時的に雨水を貯留しながらゆっくりと尾根筋方向へ分流させる仕組み。数十年に一度の集中豪雨でも雨水の洪水到達時間を遅らせ、洪水量を減少させて斜面崩壊リスクの緩和を実現する。

 向谷教授は「どうしても土木構造物は強さありきになりがちだが、水の通しやすさも欠かせない。洪水の流下を遅らせることで被害を防げたら」と強調した。

 大がかりで高コストな従来の排土や抑止杭などの工事と違い、この工法は2000万円程度と安価。短期間で広範囲を施工でき、最上流域や急傾斜地でも施工可能とみている。

 奈良高専電気工学科の土井滋貴准教授は、超低消費電力の揺れ検知装置を紹介した。表面に揺れを検知する導線を張り巡らせた器状の保持部材と、揺れを検知すると転がる真球の移動体などで構成。揺れが発生すると移動体が保持部材の上を転がり、導線と接すると電源回路がつながって報知するシステムだ。

 待機時間は電力をほぼ消費しないため、電源インフラのない場所での災害検知に有効。検出部分の機構を変更することで揺れの感度や方向性を調整でき、盗難防止など防災分野での展開も視野に研究を進める。

 小山高専機械工学科・複合工学専攻の加藤岳仁准教授は、安価で無毒な特殊インクを用いて発電層形成用や電極を塗布して作製する、超軽量でフレキシブルな発電シートを開発した。

 透過性や色調の選択性が高く、一つの基材に複合して製膜することも可能。採光と発電が必要な窓やグリーンハウス、重量のある太陽光パネルを導入できない場所など多様な用途への展開が期待できる。

 加藤准教授は、特長の一つに他の成膜発電シートより簡単な作製プロセスを挙げ、大量生産に向いていると説明。今後は、企業などとの検証で耐久性や外環境での使用の課題を探るとした。


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