数字が複雑に並んでいるのを見ると、頭の中が真っ白になり寒気もする。そんな数字アレルギーを抱えた人は世の中に多いようだ
▼筆者もその一人で、微分積分、関数、方程式などといった言葉を聞いただけで目まいに似た気分に襲われる。脳がそれらの情報受け入れを拒否しているのかもしれない。数学が得意な人に聞くと、正しい手順さえ踏めば答えが明快に一つ導き出せるから簡単だとのこと。やれやれである。統計も数学の中ではかなり難解な分野だが、厚生労働省のこのごまかしはやれやれとのんびり構えてもいられない。賃金や労働時間の実態をつかみ政策に反映する「毎月勤労統計調査」が10年以上、ずさんなまま行われていたのである
▼国内の従業員500人以上の事業所は全て調査する決まりだったのだが、東京だけは3分の1でお茶を濁していた。賃金水準の高い東京のデータが少ないためこの統計を基に算定される失業給付も低めとなり、合計560億円もの過小給付が発生していたという。追加給付が必要なため、政府はこんな時期に新年度予算案を修正する異例の事態に陥った。厚労省はどうしてしまったのか。「消えた年金」の傷も消えぬ間にまたこの大失態。少し前にも働き方改革の国会審議で不自然な調査資料が指弾されたばかりである
▼もしかすると厚労省には数字アレルギーの人ばかり集まっているのかも。数字と事件とで頭の中は今、真っ白に違いない。ただそのままでは困る。隠蔽(いんぺい)体質を改め、正しい手順を踏んで信頼回復の答えを導き出してもらわねば。