サッポロ対国税

2019年02月08日 09時00分

 海外ミステリーが好きでたまに読むのだが、面白い作品に当たったときはうれしいものだ。意外と〝はずれ〟も多いのである。最近一番楽しめたのはアンソニー・ホロヴィッツの『カササギ殺人事件』(創元推理文庫)。物語に劇中劇のような重層構造を持ち込み、謎に深みを与えていた

 ▼ところで、作家がミステリーを書く上で守らねばならない決まりがあるのをご存じだろうか。「ヴァン・ダインの20則」という。自身も著名なミステリー作家であるヴァン・ダインが提唱した規則である。最も重視すべき第1則は「事件の謎を解く鍵は探偵と等しく全て開示されていなければならない」。読者に推理する材料を与えず、後でつじつまだけ合わせるご都合主義を厳に戒めたものだ

 ▼サッポロビールの「極ZERO」訴訟でサッポロが敗訴したと聞き、その規則を思い出した。国税庁の「第三のビールでない疑いあり」との指摘から始まった騒動だが、誰にも材料が示されないまま「クロ認定」された印象が強い。サッポロは第三として売り出したものの国税から照会を受け、一度暫定的に発泡酒との差額115億円を納付。その後社内で検証した結果、やはり第三と判断したため税金の返還を求めていた

 ▼判決は下った。ただ国税が当初、第三と発泡の線をどうやって引いたのか、なぜ税金は返還されないのか真相は見えない。しかもビール類の税率は2026年までに一本化される予定だ。分かりにくく煩雑だからだろう。このサッポロ対国税の話、三流のミステリーを読まされたようでどうも後味が苦い。


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