この雪の少なさはいったいどうしたことか。札幌の中心部は道端の雪山もだいぶ小さくなり、あすから4月と言われても違和感のない風情である。いわば豪速球を覚悟して構えていたのに、スローボールで肩すかしを食わされた気分。楽できるのはうれしいのだが季節感が狂って困る
▼先月の中旬あたりから暖かい日が続く。さすがに朝晩は冷えるが昼間は3月下旬並みの気温という。雪が消えるのも当たり前である。2月に降雪がほとんどなかったこともあり、平年と比べて積雪は全道的に少ない。気象庁によると、6日現在で札幌(中央区)が平年比39%の27cm、旭川が80%の59cm、毎年雪の多い岩見沢でも78%の69cmにとどまっている。きのうの雨で雪解けはさらに進んだろう
▼「天つ日の喰ひ余したるはだら雪」山尾滋子。太陽が雪を所々解かし地表をまだらに変える情景を描いた句である。例年なら本道では3月末頃に見られるものだが、ことしは食い余すどころか既に食い尽くされてしまった感がある。きのうは二十四節気の啓蟄。いつもであればまだ眠っているはずの本道の虫たちも、こんなに早く地表が暖かくなったことに戸惑っているのでないか。「蟻穴を出でて混み合ふ出入口」鈴木征子。働き者のアリなどはもう準備万端、身ごしらえを終えているかもしれない
▼眺めるとアリばかりでなく、街を歩く人々もすっかり春の装いである。札幌管区気象台の1カ月予報では、3月も気温が高い確率70%。これはいよいよ間違いない。肩すかしでなく、肩の力を抜いても大丈夫ということだろう。