プロレスの華といえば場外戦もその一つだろう。例えば相手レスラーをリングの外に落としておいて、コーナーポストの最上部から飛び降りざま体当たりする「プランチャ」攻撃
▼昭和のプロレスファンなら初代と二代目、二人のタイガーマスクを思い出すのでないか。ただこの大技、きれいに決まれば相手に相当なダメージを与えられるが、かわされることも多い。そうなると形勢逆転。一気に窮地に追い込まれる。近頃は裁判の前哨戦でも場外戦が活発なようだ。特別背任などの罪に問われている日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告の弁護団が9日、ゴーン氏自身が出演し無実を主張する動画を公開したのである。自分を日産の経営から外すための陰謀、裁判の公正性には疑いがある、とも語っていた
▼被告がこういった形で直接世間に訴えるのは極めて異例。リングの外で検察が情報リークを繰り返し、日産現経営陣もゴーン氏有罪の心証を広めていることから、ゴーン氏側も空中戦に打って出た格好だ。この動画、冒頭に「皆さんの質問にお答えしたい」との発言があるものの、最後まで中身のある話はなかった。ゴーン氏が考えを述べるばかりで証拠は一切示されない。はて何を狙ったものだったのか
▼見当違いの体当たりで検察と日産はかわすまでもない。形勢逆転どころか世間的評価を下げた感さえある。それはともかくこの事件では、関係者の場外戦が多過ぎるようだ。それぞれ有利に立とうと画策する姿が見苦しい。裁判の華はやはり証拠を検証し事実に迫る法廷リング内の闘争に尽きる。