つらい交通事故の報が相次ぐ。死亡事故が急増したわけでもなかろうが、とりわけ胸の痛むケースが最近多いということだろう。「子の髪の風に流るる五月来ぬ」大野林火。外で元気に遊ぶ子どもが犠牲になる事故はその典型である
▼おととい、滋賀県大津市で散歩中の保育園児らが車同士の衝突事故に巻き込まれ、園児2人が死亡した。さらに1人は重体。園児と引率の保育士合わせて10人が重軽傷を負ったという。事故は県道のT字型交差点で起こった。急に右折してきた車に直進車がぶつかり、弾みで左に飛ばされた直進車が信号待ちの園児らに突っ込んだのである。右折した52歳の女は前をよく確認していなかったと供述しているらしい
▼筆者も交差点を直進中、右折車に当てられた経験があるが双方共にけがはなかった。いわゆる右直事故は珍しくない。ところが悪い巡り合わせがいちどきに幾つも重なるとこんな悲惨な結果を招くのだ。何ともやりきれない。事情を知り涙した人も少なくなかったろう。当日は事故に加え、もう一騒動あった。保育園が開いた会見で大手メディアの一部記者が園の過失を糾弾するかのような質問をし、世間の批判を浴びたのである。二次被害を生むセンセーショナリズムは厳につつしむべきだろう。報道の存在意義が問われる。肝心なのは二度と事故を起こさないための手だてだ
▼あすから春の全国交通安全運動が始まる。くしくも今回の啓発ポスターは児童が手を上げて横断歩道を渡る絵だ。子どもたちを守りたい。ドライバーの自覚一つでそれはできるのである。