どうしてこんな境遇に生まれてしまったか―。そう嘆く人も少なくなかったようだ。江戸時代の「部屋住(へやずみ)」の話である
▼武家でも商家でも、家を継げるのは嫡男のみ。次男以下は他家へ婿入りできなければ家に残って家長に養われるしか道がなかった。そんな者たちを部屋住と呼んだのである。大した仕事は与えられず結婚も許されない。生まれた順番が違っただけでである。運命を恨むのも当然だろう。日本のロストジェネレーション、いわゆる「ロスジェネ」も当時の部屋住と同じ悲哀を味わっているのでないか。バブル崩壊後の1990年代後半から00年代前半にかけての「就職氷河期」に世に出、安定した職に就けないまま40歳前後になっている人々のことである
▼仕事が非正規で収入が安定しないため、親の元で暮らし結婚に二の足を踏む人も多いと聞く。採用を絞ったのは企業側の都合なのに、経験もなく使いづらいからとやはり今も敬遠されがち。運命のいたずらとはいえ酷な話である。高齢化と人手不足に悩み外国人材受け入れを拡大しようとまでしている日本なのに、本来働き盛りの世代が活躍できる場はないときた。ロスジェネにとっては江戸封建時代と変わらぬ理不尽な世の中だろう
▼政府が先月、ようやく重い腰を上げた。経済財政諮問会議がロスジェネを「人生再設計第一世代」と位置付け、再チャレンジ支援の実行プログラムを今夏に打ち出す方針を固めたのである。かつて部屋住から剣豪や学者が輩出したように、ロスジェネのピンチもチャンスに変えられるといい。