液体のりで白血病治療

2019年06月03日 09時00分

 飛鳥時代に作られた法隆寺のくぎは、千年以上たっても朽ちることがないという。秘密は日本古来の製鉄技術「たたら」にある。『古代日本の超技術』(志村史夫、講談社)で学ばせてもらった

 ▼「たたら」は原料に砂鉄を使う。極めて高い純度の鉄を生み出すが、調べてみると現代の鉄に比べ不純物が一つだけ目立つそうだ。それはチタン。砂鉄にごくわずか含まれる酸化チタンが化学変化を起こし定着するらしい。純度の高さに加え、チタンも鉄をさびから守っていたのである。どこにでもある砂鉄とはいえ、この原料にたどり着くまで当時の人はどれだけ試行錯誤を繰り返したものか。あくなき探究心には驚くほかない

 ▼ところであくなき探究では現代の研究者も負けていない。山崎聡東京大特任准教授を中心とする共同研究チームがこのほど、白血病治療に変革をもたらす画期的な成果を発表した。どこにでもある市販の液体のりを使って移植に必要な造血幹細胞を培養・増幅させるのに成功したのである。幹細胞はウシ血清で培養するが、高価な上に主成分のアルブミンが細胞の安定的分裂を阻害する欠点があった。そこで代替できる物質をシラミつぶしに調べ、液体のりの主成分PVAを見つけたのだという。もちろん世界初

 ▼これで骨髄移植に欠かせない幹細胞を、低コストかつ安定的に増やす道が開かれる。ドナーからの提供を待つしかなかった患者には朗報だろう。千年使えるくぎ、白血病治療の飛躍的な向上。地道な探求の積み重ねがどれほどの高みに達するか、全く信じ難いくらいである。


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