SFホラー映画の名作に『エイリアン』(1979年、リドリー・スコット監督)がある。見たことのある人がほとんどだろう
▼逃げ場のない宇宙船に凶暴な謎の生物が入り込み、次々と乗組員を襲う。主人公のリプリーら乗組員は協力してエイリアンを探し、退治を試みるがことごとく裏をかかれ失敗。そうこうしているうちに犠牲者は増えていく。いつどこから来るか読めない相手に言い知れぬ不安ばかりが募る。大阪府吹田市の周辺に住む人々もそんな恐怖の一夜を過ごしたに違いない。おととい早朝、同市の千里山交番で33歳の男が警察官を襲い、所持していた実弾5発入りの拳銃を奪って逃げたのである。きのう午前6時半すぎに捕まるまで、行方はようとして知れなかった
▼見えないけれども確実にどこかに潜んでいる。道で運悪く出くわしてしまったら―、隠れ場所を求めて家に押し入ってきたら―。そう思うと生きた心地もなかったろう。残忍な男である。拳銃を使って何をしでかすか分からない。昨年6月の富山の事件が頭をかすめた人もいたのでないか。あのときは21歳の男が交番で警察官を殺害。拳銃を奪った後、小学校への侵入を企て警備員を射殺した。逃走が長引けばそれだけ被害が拡大する可能性も高まる。しかも暴力は往々にして弱い者に向かう
▼幸い今回も防犯カメラの解析がうまくいき、事件は早期解決を見た。今月28日からの大阪G20サミット開催を控えて、大阪府警も必死だったのだろう。それはともかく、映画『エイリアン』のような惨劇が続かなくて本当に良かった。