鹿児島と宮崎、熊本の3県を中心とする九州南部を長らく苦しめていた強い雨も、ようやく峠を越えたようだ。先月の末からほぼ途切れることなく降り続いた雨である。地域の人も胸をなで下ろしていよう
▼梅雨前線の影響で不安定化した大気が雨雲を次々と発生させ、それが線状降水帯となって暴威を振るったようだ。昨年のやはりこの時期に未曽有の大災害を引き起こした、西日本豪雨と同じメカニズムだという。地球温暖化の影響で昔とは雨の降り方が大きく変わってきたといわれて久しい。ゲリラ豪雨による都市型水害、常識はずれの長雨による内水氾濫や土砂崩れ。毎年のように悲しい報道を聞く。対策は気象の変化に追い付いているだろうか
▼第25回参院選がきのう公示された。争点は多く与野党火花を散らしているが、災害対策も忘れてほしくない。気象に限らない。このところの地震や噴火活動の活発化も大いに気になる。長期的視点で腰を据えて議論ができる参議院にふさわしいテーマでないか。ただ、今参院選の争点とされているのは消費税率引き上げの是非や年金制度の再構築、「アベノミクス」の見直しなどで災害対策の声はあまり聞こえてこない
▼治山治水のようなインフラ整備は少し進めるだけで確実に効果が出る。部分的にでも堤防を強化、かさ上げすることでどれだけ人命と財産を救えるか。政府も国土強靱(きょうじん)化を重点にしてはいるが、現在のペースを大胆に早める必要はないか議論が必要だろう。地味でも本当に大切な施策に力を尽くす候補者に1票を投じたい。