きょうは無礼講だから―。社長のその言葉を真に受けて幹事は大張り切り。この際だからと会社の不満分子に演説をさせるわ、好き放題に社長をののしらせるわと大騒ぎを演じる。似たような場に遭遇した人も少なくないのでないか
▼そのうち「無礼講とはいえ最低限の礼儀があるだろう」と良識ある社員が現れ、調子に乗って暴走する幹事とけんかになる。無礼講と言ってしまった手前、社長は抑えに回るしかない。そんな悲喜劇ともいえる情景をつい思い浮かべてしまった。国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展の一つ「表現の不自由展・その後」が中止になった経緯を聞いてのことである
▼同展には昭和天皇の写真を焼き灰を踏みつけにする映像作品や特攻隊の寄せ書きを載せた「馬鹿な日本人の墓」、在韓日本大使館前に設置されたのと同じ「慰安婦」像などが並べられ、公的芸術祭にふさわしくないとする人々から批判が殺到。脅迫まであったため安全策として中止措置を取ったという。この芸術祭は自称ジャーナリストの津田大介氏が監督を務める。同展も氏の肝入りで、表現の自由を巡る現状に思いをはせるため過去に公立美術館で展示を拒否・撤去された作品を集めたらしい。その結果、思想的に偏った作品ばかりになってしまったようだ
▼芸術か否かはさておきこれらもある種の表現。その自由はできるだけ守られるべきだろう。脅迫状を送った容疑者は逮捕された。大村秀章愛知県知事は再開を考えてはどうか。あとは実際に見た人が自らの良識に従って評価を下せばいい。