ハリウッド映画を見ているとよくこんな場面に出会う。例えばニューヨークで強盗や殺人が起こる。街では大して珍しい事件でもない。いつも通り地元の市警が捜査に乗り出すと、途中からFBI(連邦捜査局)が出てきて捜査権を奪われてしまうのである
▼市警の責任者が言う。「FBIがこんな所まで何の用だ」。捜査官は高飛車に答える。「事件は今からFBIが担当する。今後は私の指示に従ってもらおう」。全米を揺るがす重大事件に関係する可能性が高いため、君たちのような田舎の警察には任せておけないというわけだ。地域の実情も知らないFBIに引っかき回されるのは気分が良くないものの、地元警察としてはどうしようもない
▼現場の小中学校も今、この地元警察と同じ気分を味わっているのでないか。文部科学省が来年度、学校を介さずに不登校の児童生徒から聞き取り調査する方針を固めたそうだ。『読売新聞』がきのう付紙面で伝えていた。「この件は文科省が直接担当する」である。学校の取り組みを信用しないわけでなく、「不登校の原因や背景を詳細に把握するため」が一応の名目。ただ、記事によるといじめの認知件数が過去最多を記録しているのに、学校側が挙げる不登校の理由にいじめが極端に少ないのだとか
▼故意のごまかしでないにせよ、事なかれ主義や事態の見過ごしがないとは言い切れまい。学校のような閉じた世界ではありがちなことである。映画では最後にFBIが地元警察に鼻を明かされることが多いが、さて、こちらの頭越しはどんな結果が出るのか。