見上げればいつでも眺めることのできる近県の人ばかりでなく、日本人なら老若男女問わず誰でも口ずさめる歌だろう。文部省唱歌の「富士の山」のことである
▼タイトルを聞いて頭の中で自然と歌が再生された人もいよう。一番はこんな歌詞だった。「あたまを雲の上に出し 四方の山を見おろして かみなりさまを下に聞く 富士は日本一の山」。高さといい均整のとれた立ち姿といい、まさに日本一の山である。森ビル(東京)が東京都港区の虎ノ門・麻布台地区市街地再開発で、高さ日本一となる地上約330㍍の複合ビルを新築するそうだ。四方のビルを見下ろす都心の新たなランドマークの誕生である。超高層建築で高さ日本一と聞くと興奮を覚える人も多いのでないか
▼区域面積8・1㌶に及ぶ再開発のメインタワーで規模は64階、延べ46万平方㍍。52階までがオフィスや商業施設、インターナショナルスクール、54階からが約90戸の住宅になる。最上階の高さは東京タワーの先端とほぼ一緒という。世界一の超高層は米映画『ミッション・インポッシブル6』の舞台になったドバイのブルジュ・ハリファで828㍍。かなり開きはあるが地域性を無視して高さだけ比べても仕方あるまい
▼再開発では他に高層2棟と低層1棟を配し、生み出した空間を最大限緑化。非常時のエネルギー自給能力や帰宅困難者の受け入れスペースも用意するなど、災害の多い日本で安心して働き、暮らす工夫が盛り込まれている。均整のとれた全体像もなかなかのもの。富士山のように世界に誇れる街になるといい。