厚労省改革に若手提言

2019年08月29日 09時00分

 童話作家宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』にはいささか奇妙な人物が幾人か登場する。「鳥を捕る人」もその一人。天の川の岸辺でツルやサギをつかまえる商売をしている人である。この世界ではお菓子のようで大層人気らしい

 ▼この鳥捕りがひと仕事終えて客室に戻ってきたときのせりふが昔から好きだった。「ああせいせいした。どうもからだにちょうど合うほど稼いでいるくらい、いいことはありませんな」。無理せず、かといって怠けたりもせず、足るに必要な分だけ働くのが充実感を得る秘訣(ひけつ)ということだろう。やさしい言葉で働き方の極意を教えられた気がしたものである。厚生労働省の若手職員が言いたいこともつまりそれでないか

 ▼現状に強い危機感を抱いた若手職員の検討チームが26日、同省を変えるための緊急提言をまとめ、根本匠大臣に提出した。果たすべき使命とままならぬ現実とのはざまで苦しみ、過剰労働で燃え尽きる人が後を絶たない事態を打開しようとの試みである。チームには「生きながら人生の墓場に入った」「毎日いつ辞めようか考えている」といった悲痛な声が続々と寄せられたそうだ。年金、少子高齢化など懸案は多いのに、深刻な人手不足や古い組織風土が業務を妨げる。時間無視の一部国会議員もそれに拍車をかけているのだとか

 ▼働き方改革の先頭に立つ官庁が、全省庁の中で最も「ブラック」とは情けない。職員だってひと仕事終えて、充実感とともに「ああせいせいした」と言いたかろう。墓場での仕事が国民のためになるとは到底思えない。


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