いったんはソファーの背に深く体をうずめたものの、次第に背筋が伸びていき、さらに体が前のめりになり、ついには立ち上がって歓喜の雄たけびを上げる。先の日曜日にはテレビの前でそんな人が多かったのでないか
▼横浜市の日産スタジアムで行われたラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会の日本対スコットランド戦である。日本代表は28―21でスコットランドに快勝し、史上初のベスト8入りを果たした。試合開始後6分でスコットランドのラッセルにトライを奪われたときには頭の中に暗雲が広がりかけた。やはりこの国は倒せないのか―。ところが、だ。ここから日本は猛烈な反撃に出る。17分松島、25分稲垣、そして前半終了間際の39分福岡とトライを重ね、田村のコンバージョンゴールも全て成功。前半で21―7と相手を突き放した
▼松島と福岡のスピードも圧巻だったが、強力なタックルを繰り返し、難しいパスをつないで最後に稲垣がトライに持ち込んだ連携プレーには心を揺さぶられた。テレビ中継の瞬間最高視聴率が53・7%に上ったというからこれ以上は蛇足だろう。あとは決勝トーナメントで勝ちを一つ一つ積み上げるのを期待するのみである
▼それはそうと今回はラグビーの別の魅力にも気づかされた。選手のジェントルマン精神である。チーム最年長トンプソンが勝利後の会見で台風19号の被災者を気遣い、こう語っていた。「ラグビーは小さいこと。(被災した皆さん)頑張ってください」。災害の大きさに比べて、の意味だろう。日本代表も被災者も全力で応援したい。