正体を隠し、「遊び人の金さん」としてちまたにはびこる悪をあぶり出す江戸北町奉行遠山金四郎景元の活躍を描いた時代劇といえば『遠山の金さん』である。ドラマの中にこんな場面がよくあった
▼親玉にだまされ、犯罪の片棒を担いでしまった男が改心して事件の解決に協力する。そんなときの金さんの沙汰だ。「遠島申し付けるところなれど、心からの悔悛が認められるゆえ、罪一等を減じ江戸所払いとする」。つまりはそれと同じことなのかもしれない。「恩赦」の件である。政府は皇位継承に合わせて行う恩赦の対象を約55万人と見込み、きょうの閣議で決定するそうだ
▼ただ、正直に言うと実施する意義がよく分からなかった。同じ思いの人は案外と多いのでないか。恩赦は裁判の手続きを踏まずに、有罪判決の効力を失わせたり軽減したりする。いわば行政が司法の懐に手を突っ込み、書類を書き換えるようなもの。王国でもあるまいに、おめでたいからといって勝手に判決を覆していいものなのか。疑問を感じ調べてみると、そこまで大きな話ではなかった。実は慶事がなくとも恩赦は毎年行われているのである。法務省の統計によると2018年19人、17年23人、16年29人といった具合
▼一度は罪を犯したものの、更生著しく早期の社会復帰が望まれる場合に本制度が使われるとのこと。それなら不思議はないしむしろ当然のことでもあろう。今回はそれを大々的に実施しようというわけだ。せっかくの機会、罪一等を減じられた人々がこの社会で新たな責任を果たすきっかけにできるといい