どんなささいなことにも文句を付けずにはいられない人がいる。落語の「小言幸兵衛」はそんな人の日常を面白おかしく描く
▼この幸兵衛さん、朝から晩まで小言の出ない時はない。ある日、貸店の札を見て訪ねてきた人がいた。最初は丁寧に対応していたが、家族に美男子の息子がいると聞くと態度が一変。「そんな男がいたら色恋沙汰が起きる」「近所の娘と駆け落ちするに違いない」「揚げ句には心中騒動だ」。勝手に物語を作り、延々と文句を並べる。ついには「そんな奴にうちの店は貸せん、帰ってくれ」。本人は自分の正しさを毛ほども疑っていないから一層たちが悪い。幸兵衛さんはどこにでもいるが、最近はテレビで見掛けた。テレビ朝日の夜のニュースショーである
▼28日、番組の途中で「速報」が伝えられた。何かと思えば、河野太郎防衛相がパーティーで「私は雨男」と発言したのだとか。気象災害が続く中で不謹慎だという。「批判を受ける可能性があります」。キャスターの小言である。これだけ聞くと軽率と思う人もいよう。ただ報道されなかったものの河野氏は続けてこう語っていた。「就任後に災害が相次ぎそのたび自衛隊が頑張っている。活動に見合った処遇改善や誇りの持てる自衛隊づくりを進めたい」
▼伝えるなら「雨男」よりこちらの方だろう。台風の被災地千葉市の熊谷俊人市長もツイッターで、マスコミが本来の趣旨をゆがめ世論を誘導する弊害を指摘していた。自分だけが正しいと思い、文句ばかり言っていた幸兵衛さんは最後に痛い目に遭う。さて「報道」は。