長野県の機転

2019年11月12日 09時00分

 人間は2000年以上前から光通信を活用していた、と聞けば驚くかもしれないが事実である。その方法をのろしという。「なーんだ」とおっしゃるなかれ

 ▼物理学者の寺田寅彦も紀元前にギリシャで使われていたのろしについて、「波長の長い電波ではなくて、ずっと波長の短い光波を使った」通信法だったと随筆に書いている。昼は煙を高く上げ、夜は火を燃やすことで情報を瞬時に伝えることができたのである。敵の襲来や命を脅かす大事件といった緊急事態が起きたとき、情報伝達は早ければ早いほどいい。素早く手を打つことによって、危機を切り抜けられる可能性が高くなるからである。通信の優劣が共同体の運命を左右してきたわけだ

 ▼現代もそれは同じ。先の台風19号で大きな被害を受けた長野県で県庁の発災時対応が高く評価されているという。SNSの「ツイッター」を通信手段として活用し、川の氾濫で孤立していた人ら約50件の救助につなげたのである。NHKがニュースで紹介していた。県危機管理防災課の職員がツイッターに上がってくる救助要請を独自に収集し、投稿者とも連絡を取り合いながら随時消防や自衛隊に情報を提供していったのだとか。ツイッターの見張り台で、職員が次々に上がるのろしに目を光らせていたようなものだろう

 ▼最初から計画していたわけではなく、状況を見た職員が機転を利かせて急きょ始めたらしい。ただの煙を「光波を使った」情報伝達のツールとしたように、通信手段に知恵が加わるとどれだけ素晴らしいものになるかを示す好例でないか。


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