自分のやりたい仕事や、かなえたい夢があって都会へ出て行ったのだろうと想像する。ただし現実の話でなく松村和子さんの往年のヒット曲『帰ってこいよ』(平山忠夫作詞)の中で描かれた女性のこと。3番はこんな歌詞だった
▼「可愛いあの娘の 帰る日を お岩木山で 今日も又 津軽の風と 待っている 忘れはしまい あの約束の こんなにきれいな 茜空 帰ってこいよ 帰ってこいよ 帰ってこいよ」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「はやぶさ2」がきのう、小惑星リュウグウでの1年5カ月にわたるミッションを終え帰還の途についたと聞き、その歌が思い浮かんだ。地球から直線距離にして2億5000万㌔彼方の宇宙で頑張っていたけなげな探査機の帰る日も、皆楽しみに待っているに違いない
▼はやぶさ2は事前のプログラム通りに化学推進系スラスタを噴射し、午前10時05分に毎秒9・2cmの速度でリュウグウからの離脱を開始したそうだ。JAXAによると至って順調だという。今後は18日頃をめどに重力の影響を受けない高さまで上昇、12月3日以降に推力をイオンエンジンに切り替え帰還軌道に乗せる。うまくいけば来年12月頃、地球に近づき、採取した貴重な砂や石などが詰まったカプセルを放出する計画だ
▼登山の世界ではよく「家に帰るまでが登山」といわれる。はやぶさ2もリュウグウがゴールではない。これから地球まで、頼る者もいない宇宙をさらに8億㌔も飛行せねばならない。どうか家まで無事で。必ず「帰ってこいよ 帰ってこいよ 帰ってこいよ」。