昨今は派手な披露宴をしない「地味婚」を選ぶ人も増えているようだが、結婚式といえばかつては多くの客を集めて大々的に挙行する形式が主流だった。そこで頭を悩ませたのが誰を招待するかである
▼友人、親類縁者、上司、同僚―。できるだけたくさんの人を呼びたいが会場の広さには限りがある。絞り込まねばならない。さりとて「あいつが招かれてるのに俺が入ってないのはおかしい」と文句が出るのも困る。その後の付き合いも考えると、勢い「範囲を広げて集めてしまえ」となるわけだ。ついでに地元の議員にも案内状を送ったりして。そんなこんなで披露宴の規模はどんどん膨らんでいく。まあ、これと似たようなものでないか。首相主催の「桜を見る会」の話である
▼毎年4月に皇族や国会議員、各界の代表者、功労者を招いて開かれる会だが、人数と経費は年々増え続ける一方。安倍首相が後援会関係者を多数招待していることから、野党が会の私物化だと徹底追及の構えを見せているのである。安倍首相は今月19日に通算在職日数2886日となり、歴代1位の桂太郎と並ぶ。それだけ付き合いも増えるわけで規模が膨らむのも当然だろう。ただし当然だから良いというものではない。「李下に冠を正さず」で、政権の長としては自制あってしかるべきだった
▼民主党政権時も継続していた催しである。桜をめでながら各界の代表者が歓談する行事は日本らしくていいではないか。政府は招待基準の明確化やあり方を見直すため来年の会の中止を決めたそうだ。「地味会」も悪くないのでは。