きのうのきょうでまたずいぶんと胸の苦しくなることを言ってくれるものだ―。ニュースを聞き、そんな苦い思いを抱いた人も多かったのでないか。国際通貨基金(IMF)がおととい、「日本は2030年までに、消費税を15%に増税する必要がある」との声明を発表したのである
▼8%から10%に上がったのはつい先日のこと。今最も耳にしたくない話題だろう。乾いた雑巾を絞られるようで切ない気持ちになる。高齢化により医療費など社会保障関連の支出が今後も増え続け、現在の税収では財政運営が危うくなるからだという。加えて財政の持続可能性を確保するため、社会保障制度や労働市場の改革を一層進めるよう注文も付けたそうだ
▼〝しかしちょっと待てよ。最近これと似た話をどこか他でも聞いたな〟と気付かれた方は察しがいい。IMFの発表とまさに同じ25日、国の財政制度等審議会が来年度予算編成に向け、表現は違えど内容がほぼ一緒の提言を麻生副総理兼財務大臣にしていたのである。こんなからくりがあるらしい。元財務官僚の〓橋洋一嘉悦大教授によると、IMFの対日審査は「日本のいうことを、そっくりそのままIMFが書いているだけ」(『日本は世界1位の政府資産大国』講談社)。日本とはもちろん財務省である
▼財政審の提言も原案は財務省だ。つまり財務省は国際機関や民間有識者の名義を借り、緊縮の考えを国民にすり込もうとしているわけ。本来これを監視するのが国会議員の役目なのだが、最近は桜の周りで踊るのに忙しいとみえてどうも頼りにならない。