ことしの「本屋大賞」でノンフィクション本大賞に選ばれたブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)を読んでいて、こんな一節に目が留まった。数字の間違いでないか、と思ったのである。「英国では一年間で10万人以上の16歳以下の子どもたちが行方不明」
▼同書は英国で暮らすブレイディさんと子どもの成長物語だ。先の話は知人の子どもが失踪したときに出てきた。どうやら事実らしい。NGOの児童失踪・児童虐待国際センターによると、英国は米国の42万人(2018年)に次いで子どもの行方不明が多い国という。理由は正確にはつかめていないものの、おおよそ半分が家出、3割が誘拐や連れ去りなど犯罪絡みとみられている。2割は原因も不明だ
▼日本はといえば警察庁の調べで20歳未満の行方不明は1万7600人(18年)。日本の人口は英国の倍、米国の3分の1だから、いかに英米の状況が深刻か分かる。日本は先進国の中でも少ない方なのだ。ただ、日本もうかうかしてはいられない。近年はSNSが子どもに普及することで犯罪の新たな温床ができつつある。先週、小6の女児を誘拐した疑いで栃木県の男が逮捕された事件でも、SNSが誘い出しに使われていた
▼こちらも警察庁の統計だが、去年の「SNSに起因する被害児童」は1811人。ここ5年で一気に500人ほど増えている。悪意ある大人がたやすく子どもに接触できる環境が整ってきたのだ。子どもの行方不明の数まで欧米に近付ける必要はない。ここで食い止めねば。