かわいい詩を一編紹介したい。当時保育園に通っていた望月栄里さんの「きゅうしょくのせんせい」(1996年)である
▼「きゅうしょくの/おだかせんせい/ほいくえん/やめちゃうんだって/けっこんして/だんなさまに/おいしいの/つくってあげるんだって/だんなさまが/ほいくえんに/たべにきてくれれば/いいのにね」(『ことばのしっぽ』中央公論新社)。親としては「そうだね」と言うほかない。大好きな先生に会えなくなってしまうのは寂しいし、おいしい給食もこれからどうなってしまうのか。園児にとってはまさに一大事。愚痴の一つもこぼしたくなろう。先生はそれほど特別な存在なのである
▼その先生たち18人もが一斉に、今月28日付での退職届を提出したというのだからただ事ではない。静岡県浜松市の認可保育所「メロディー保育園」で持ち上がった大騒動である。園長の夫である専務が、保育士と職員にパワーハラスメントやセクシャルハラスメントを繰り返していたらしい。園児のことを思い我慢に我慢を重ねてきたものの、ついにたまりかねて皆で退職を決断。保護者に実情を訴えたそうだ。パワハラやセクハラは卑劣な上、被害者の心を深く傷付ける。子どもにとって社会生活の入り口ともいえる保育園で、大の大人が一体何をしているのか
▼園は14日に保護者説明会を開き、各種のハラスメントがあったことを認め、謝罪した。園長と専務は退任し、別の会社に運営を任せるという。「せんせいやっぱりやめないんだって」。園児のそんな喜びの声が聞けるといい。