昭和歌謡の一つに「若いってすばらしい」という題名通りの歌詞の印象的な曲(安井かずみ作詞、宮川泰作曲)があったが、こちらも一首一首読んでいくとそんな気持ちにさせられる
▼東洋大学の第33回「現代学生百人一首」入選作品が発表になった。「元号をスマホ片手に待ちわびてSNSで令和と知りぬ」(阿南工専5年高島雄太)。改元で万葉集が脚光を浴びたため、今回は6万首を超える応募があったそうだ。若さゆえのはじけるような喜び、つらい悩み、大人への階段を上る中での迷いが歌から伝わってくる。数首紹介したい。「母の背が大人になるなと語ってるごめんよ僕はもう子供じゃない」(品川区立大崎中3年早川将風)。引き留めてくれるなおっかさん
▼「おめでとう妹祝う誕生日こっそり祝う姉になった日」(西武学園文理高1年小川璃乃)。「しわくちゃの手を握って行った墓参り今年は握らず会いに行く夏」(秋田北高1年塩田遥子)。生も死も柔らかな心に深く、優しく刻まれていく。まだ十代後半ながら早くも職人魂を熱く燃え立たせている歌もあった。「ただの鉄それだからこそ俺達の技術使って命吹き込む」(広島工高1年山根飛和)。「測量でかげろうできて誤差が出るピントが合わずとても悔しい」(八幡浜工高3年山下一平)。実に頼もしい
▼とはいえ、時には現実の厳しさに打ちのめされることもある。「帰り道惰性で買ったマシュマロに救われるような夜もあります」(慶応義塾湘南藤沢高2年天田憲壮)。甘く切ない味だったろう。いやー、若いって素晴らしい。