浄土真宗の祖、親鸞は9歳の時に得度のため比叡山を訪れた。着いたのが夜遅くだったため、「時間も遅い。あすにしてはどうか」と勧められたが、親鸞はこんな短歌を詠んでその日のうちに得度を受けさせてもらったそうだ
▼「明日ありと思う心のあだ桜夜半に嵐の吹かぬものかは」。あした見ればいいと思っていた桜も、夜に嵐が来れば全て散ってしまう。先に何があるかなど人間には分からないというのだろう。あまりに悲しい出来事である。おとといの朝、神奈川県逗子市の市道脇歩道を歩いていた女子高生が、突然崩落してきた土砂の下敷きになり亡くなった。夜に嵐が吹くどころではない。住宅街のただ中である。土砂崩れに巻き込まれるとはいったい誰に予想できようか
▼18歳というから今は高校卒業を控え、文字通り未来に夢や希望を膨らませている時期だったに違いない。本人も無念だったろうが家族や友人たちの心痛もいかばかりか。ほんの1分前後していれば運命は変わっていたと思うと―。現場横は上にマンションが立つ高さ15mほどの斜面で、下から5mほどが石垣で補強されていたという。その上部のむき出しの土砂が崩れたのである。「土砂災害警戒区域」に指定されていたらしい
▼おととしの大阪北部地震で高槻市の小学校のブロック塀が崩れ、登校中の女児が亡くなった事故を思い出す。あの時も事前に危険は指摘されていた。今回も警戒区域指定があったということは対策をとれた可能性もなくはなかったのだ。桜を散らすのは防げたかもしれないと思うと残念でならない。