テレビばかり見てるとばかになるからいいかげんやめなさい―。子どものころ、親にそう言われた人は多いのでないか。当方も毎日のように叱られていた一人である。それでもかじりついていると突然スイッチを切られたりして
▼何せ、ザ・ドリフターズの『8時だョ!全員集合』や「欽ちゃん」こと萩本欽一さんの全盛期で、歌番組も豊富。その上、特撮ドラマやアニメもあるとなれば画面から目を離す方が難しい。今も普通に社会生活を送れているところをみると、幸いにして親の予言は外れたようだ。当時は世間でもテレビの弊害がかなり声高に叫ばれていて、子どもに見せるのは平日1時間、休日3時間などと制限する家庭や学校も少なくなかった。どれだけ効果があったかは疑問だが
▼香川県が現在、子どものネットゲーム時間に制限を設ける条例の制定を検討していると聞き、昔日の経験を思い出した次第。県議が超党派の議員連盟を結成して強く推進し、ことし4月1日の施行を目指しているそうだ。名称を「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)」という。過剰な利用で依存症になると親子の信頼関係形成が阻害され、社会参加への意欲も失われる問題を指摘。それを防ぐための学校や保護者、行政、事業者の責務を定める
▼趣旨はもっともだろう。「ゲーム障害」は今や世界保健機関も危惧するところだ。ただ、かつてテレビっ子で今テレビ依存症の人はまずいない。条例で時間まで決めて上から押さえつけるやり方が妥当なのかどうか。親の目を盗んで見ていたあのころが懐かしい。