脳裏に穏やかな情景が浮かび、心がしんとする詩でないか。雪国の人ならお分かりになろう。「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ/次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ」。三好達治の「雪」である
▼太郎と次郎の家がもし北海道にあれば今冬は、その情景を見る機会も幾分少なかったはず。札幌管区気象台が2日、昨年12月からことし2月までの本道の降雪量は、平年比58%で記録的少雪だったと発表した。札幌も2月は連日の雪かきに悩まされ、いよいよ帳尻を合わせにきたなと天をにらんだものの、実際は平年比73%の334cmにとどまったという。1月に大雪が降ったオホーツク海側も56%、日本海側も55%と、1961年の統計開始以来最も少なかったそうだ
▼「六花豊年の兆し」という言葉がある。六花とは雪の結晶のこと。大雪の年は作物が豊かに実るとの意味だ。似たような話はよく聞く。その伝でいくとことしは記録的不作となるが、現実には関係がないのだとか。ひとまず安心である。どうやらまだ農業技術の発達していない昔、雪の多い年は用水に不自由せず豊作を期待できたため生まれた説らしい。今は雪解けの早い方が準備も作付けも適切な時期にでき望ましい。農家の方々は早くも体がうずうずしているのでないか
▼札幌管区気象台の1カ月予報によると、今月は日本海側、太平洋側共に気温が高く、降雪は少なめの見通しだ。「雪解音しきりとするや昨日今日」保坂加津夫。雪解けが一気に進む。雪と一緒に新型コロナウイルスも消えてくれると、もっとうれしいのだが。