伊藤組土建(本社・札幌)で土木部の正社員として働くベトナム人のグエン・ヴァン・ハイさん(27)が2月、2019年度の2級土木施工管理技士の検定試験に合格した。外国籍の技術者が合格するのは全国でも数例しかなく珍しい。もともと実地試験の合格率が4割という難関の上に言葉の壁もあったが、熱心に試験勉強に取り組むとともに現場勤務の経験を生かし合格をもぎ取ることができた。ハイさんは今後の目標として「工事主任になれるよう頑張りたい」と話している。
ハイさんはハノイ交通運輸大出身。大学時代に参加した交流会やセミナー、現場見学会を通じて日本の建設技術に興味を持ったことから日本での就職を志し、16年6月に同社に入社した。
入社1年目は主に日本の生活習慣に慣れる期間に充てたが、2年目からは他の社員と同じように工事係として現場に勤務している。これまでにトンネル工事やスキージャンプ場の改修、道路改良、樋門改築などの現場を回り、現地の測量や写真撮影、安全書類の作成・管理などに取り組んだ。
2級土木施工管理技士への受験は会社からの薦めもあり挑戦することにした。試験の雰囲気を知るために18年度に1度受けた後、19年度に本格的に合格に向けて取り組み、土日は1日3―4時間を試験勉強に費やした。会社側も受験料や外部講習の費用を負担するなどサポートをした。
ハイさんは、入社当時にはあいさつや自分の名前を言う程度の日本語を習得していたが、特に記述方式の実地試験では、建設関連の専門用語を含めてさらなる日本語の読み書きの能力が問われる。その点に関しては、1年目に集中的に勉強したほか、現場で勤務するようになっても分からない言葉があれば必ずメモを取り後で意味を調べるなどして覚え、作業員にきちんと指示ができるほどまで上達。成田光由紀土木部工事課長は「会うたびに日本語の理解度が上昇していた」と、ハイさんの習熟に舌を巻いた。
実際に試験を受けて「できる」と実感したという。試験問題には現場でやってきた業務に関することも出てきたため、これまでの勤務経験も大いに生かすことができた。
成田課長はハイさんの合格についてこれまでの努力を称賛するとともに「将来的には所長として現場を任せられる人材になってほしい。そのためにもう一つ上の1級を取ってもらいたい」と期待をかける。同社にはハイさんのほかに入社して1年3カ月のベトナム人技術者が2人いるが、「彼(ハイさん)を目標にして2級の取得を目指してもらいたい」と、互いに切磋琢磨(せっさたくま)することを望んでいる。
(北海道建設新聞2020年3月6日付1面より)