人気ドラマ『北の国から』(フジテレビ)の主題歌を作ったさだまさしさんには心の琴線に触れる歌が多い。映画『ひめゆりの塔』(1995年)で使われた「しあわせについて」もその一つ。時々無性に聞きたくなる
▼歌い出しはこんなだった。「しあわせですか しあわせですかあなた今 何よりそれが何より一番気がかり みんなみんなしあわせになれたらいいのに 悲しみなんてすべてなくなればいいのに」。日本中の人々がそう願っているに違いない。きょうは9年目の3・11である。東日本大震災からもうそんなにたったのだ。この9年の間にも地震、台風、噴火とたくさんの災害があった。どこが被災地になってもおかしくない。少しでも被害を減らすためにわれわれにできることは何だろうか
▼東日本大震災で「釜石の奇跡」と呼ばれた事例がヒントとなろう。片田敏孝群馬大名誉教授が震災前から小中学校で続けていた出前授業によって、児童生徒にほとんど犠牲者を出さず済んだ出来事である。教授はまず子どもたちを市内に34基ある津波慰霊碑に連れて行ったそうだ。そこにはたいてい津波の恐ろしさを後世に伝えるメッセージが刻まれている。こう諭したという。「津波は君たちが生きているうちにも必ず来る。想定にとらわれず率先して避難しなさい」
▼さださんの歌はこう続く。「どうぞあやまちは 二度とくり返さずに」。教授の教えにも通じる心構えだろう。先の教訓を忘れてはいないか。油断で幸せを失ってしまわないよう、あの日胸に刻んだ碑文をあらためて読み直したい。