童謡「ぞうさん」や「一ねんせいに なったら」の作詞でも知られる詩人のまど・みちおさんは、こんな考えを持っていたそうだ
▼「私は私という人間ですけど、こういう人間になってここにいようと思ってここにいるわけではないんです。私だけでなくてあらゆる生き物がそうなんです。気がついたら、そういう生き物としてそこにいる。ということは、やっぱり、生かされてるっちゅうことじゃないでしょうか」。100歳の時の言葉だという。『どんな小さなものでも みつめていると 宇宙につながっている』(新潮社)に教えられた。全ての生き物は生かされてここにいる。小さな命にも常に優しいまなざしを向け続けたまどさんは、生涯を通じそれを伝えてきたのだ
▼2016年に相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人を殺害し殺人罪に問われた植松聖被告の頭には、最後までそんな考えはかけらも浮かばなかったに違いない。16日、横浜地裁は求刑通り死刑判決を言い渡した。まどさんの詩を引く。〝ぼくが/ここに/いるとき/ほかの/どんなものも/ぼくに/かさなって/ここに/いることは/できない(略)ああ/このちきゅうの/うえでは/こんなに/だいじに/まもられているのだ/どんなものが/どんなところに/いるときにも/その「いること」こそが/なににも/まして/すばらしいこと/として〟
▼入所者が全力で生きようとして「いること」、家族らに愛されて「いること」。その素晴らしさに気付こうともしなかった惨めな人間の末路がこれである。