ニュースや事件物のテレビドラマで見た覚えがある人も多いのでないか。犯罪集団が内部の結束力を強めるため昔からとっている方法に、構成員一人一人に法律を破る悪事を働かせるやり方がある
▼その中身は暴行や盗み、詐欺など犯罪そのものから、見張りや下準備、逃走の手伝いといった後方支援までいろいろだ。捕まるときは一蓮托生(いちれんたくしょう)。共犯関係を作り、裏切りをできにくくするわけだ。関西電力の役員らが高浜原子力発電所が立つ福井県高浜町の森山栄治元助役から表に出せない金品を受領していた事件も、それと似た構図があったらしい。第三者委員会が14日に報告書を発表した。懇意の企業に工事を受注させ自分も利を得たい森山氏と、地元で隠然たる力を持つ森山氏を使って原発事業を円滑に進めたい関電。そこにあったのはある種の共犯関係である
▼その結果が30年以上にわたる森山氏と関電の異常な癒着だった。水をも漏らさぬ鉄壁の秘密主義は犯罪集団も顔負けだろう。この間に金品を受け取った役職員は75人で、総額は3億6000万円にも上るという。ただ報告書には、受け取りを断ったときの森山氏のどう喝や嫌がらせがひどく、自身と家族への危害や事業妨害など現実の恐怖もあったと記されている。耳を疑う内容だ
▼とはいえ関電の「事なかれ主義」が森山氏を増長させたのも事実。経済産業省はきのう、関電に電気事業法に基づく業務改善命令を出した。再発防止や企業統治の強化を求めるという。共犯関係による結束などいつまでも続くものではない。