めったに起こらない幸運に頼って暮らすことほどばかばかしいことはない。それを教える中国の故事「株を守る」を知らない人はいないだろう。こんな話である
▼宋国に田を耕して生計を立てている男がいた。ある日、畑の中の切り株にウサギがぶつかり、首の骨を折って死んだ。これはうまい具合だとその日から男は働くのをやめ、楽してウサギが手に入るのを願いながら日々株を眺めて過ごすようになるのである。現実にそんな人がいるわけない、と思いがちだが案外そうでもないらしい。一部野党が国会でまた森友学園問題を持ち出しているのである。3年余り安倍首相を追及し続け、首相関与の事実は出てこなかったものの一定のイメージダウンには成功したため、あのウサギよもう一度といったところだろう
▼土地取引に絡む文書の改ざんに携わった近畿財務局職員の手記が公表されたのを受け、政府に再調査を要求したのだ。手記には秘密の暴露のような目新しい事実がなかったにもかかわらずである。首相主催の「桜を見る会」で政権が小揺るぎもしなかったのも腹に据えかねていたに違いない。ただ、野党はウサギがつまずくのを座して待つだけの敵失頼みから、そろそろ脱却した方がいい
▼今は新型コロナウイルスによる景気悪化や生活困窮、弱者へのしわ寄せなど政治が取り組まねばならない仕事が山ほどある。逆に考えれば政府をただしつつ、野党の見識を国民に知らしめる絶好の機会でないか。この期に及んで選ぶ国会戦術が「株を守る」では、宋国の男同様、世間から笑われるだけだ。