英文学者の外山滋比古さんが著書『知的創造のヒント』(ちくま学芸文庫)で、補色の面白さに触れていた。違う色の絵の具を、混ぜるのでなく隣り合わせに並べると、眺めて見たときにそれぞれの色が持っていないような輝きが出るというのである
▼例えば「緑色と紫色をパレットの上で混合すれば、にぶい灰色になるが、点描によって並置すると輝いた真珠色に見える」そうだ。組み合わせの妙というものだろう。こちらも今まで見たことのない輝きを放つことになるのだろうか。全く違う色を持つトヨタ自動車とNTTが24日、資本・業務提携を結ぶと発表した。互いに2000億円を出資し、高速大容量通信を基盤に自動運転やエネルギー最適化を実現する最先端の「スマートシティー」構想を進めるという
▼トヨタは既に静岡県裾野市で、ICT端末となる「コネクティッドカー」を核にした未来都市建設計画を打ち出している。ここにNTTの情報技術を実装し、街づくりのノウハウを蓄積するらしい。全ての人と車と家をインターネットでつなげて調整するため交通事故や渋滞は起こらず、二酸化炭素の排出もない。国際標準のシステム構築に向け、世界が今最もしのぎを削っている分野の一つである
▼日本のトップ企業2社が組むことで、この分野でも一歩先を行く巨大IT4社「GAFA」に対抗できる形が整う。ただ、最先端の街には新しいインフラがいる。さらに多くの企業の参画が必要となろう。違う色を持った企業が一つのキャンバスに並ぶ点描画がどんな絵になるか、楽しみである。