静かな「個室オフィス」を提供

　道内企業で在宅勤務などのリモートワークが急速に広がってきたことを受けてホテル各社が、日中の客室を仕事場として使える利用プランを打ち出している。新型コロナウイルスの影響で観光客が減り、どの施設も客室稼働率が低迷中。空き室の有効活用策としても注目されている。

　京王プラザホテル札幌[MAP↗]は、午前8時から午後8時まで滞在できる「リモートワークプラン」を売り出し中だ。無線ＬＡＮが自由に使えるほか、ＪＲ札幌駅徒歩5分の立地ながら滞在中は駐車場が出し入れ自由となる。料金は税込みで4800円。昼食付きプランもあり、館内レストランで使える1500円分の金券を含めて6000円で販売している。

　京プラはコロナ問題の影響で外国人客のキャンセルが相次ぎ、3月の客室稼働率は9.5％と前年同月の65％から大幅に落ち込んでいる。空き室対策として社内でアイデアを出し合い、6月末までの限定プランとして3月23日に発売した。営業企画担当者は「急に会社の方針で在宅勤務になっても家庭ではなかなか仕事に集中できない方もいる。消毒や加湿が行き届いた静かなホテルを、日中の個室オフィスとして提案したい」と話す。

　ビジネスホテルのＪＲイン札幌[MAP↗]は1日、3500円で午前10時から午後5時まで使える「テレワーク応援プラン」を売り出した。やはりコロナ問題で出張・観光客が減ったため、テレワーク需要に注目した。

　同施設は札幌駅徒歩2、3分という立地の良さや、机の幅250cmという客室内デスクの広さを売りとする。特別な宣伝をせず予約サイトに載せただけだが、複数の予約が入ったという。

　プランは平日限定で、今のところ30日まで。足元の稼働率とコロナ問題の状況を見ながら延長を検討する。

　札幌・大通地区のガーデンズキャビン[MAP↗]は、小机とベッドを備えたスペースを9時間2000円で提供し始めた。寝室に鍵がかからない「簡易宿所」式の宿泊フロアで、チェックイン時間は午前9時から午後10時まで。追加料金1000円で宿泊もできる。

　運営会社のホテル十勝屋(本社・帯広)によると、利用客の大半が30―40代の男性で、多いときは1日当たり4、5件の利用があるという。施設ではウイルス感染防止のため、チェックイン時のマスク着用と検温を利用条件とし、体温が37・5度以上なら利用を断る。

　子ども連れに着目する施設もある。星野リゾート(本社・軽井沢)は、占冠村の星野リゾートトマム[MAP↗]など全国の「リゾナーレ」ブランド施設でリモートワーク向けプランを売り出した。家族客を対象に宿泊料を通常より15―40％割り引く。大人が仕事に集中する間、子どもが野外体験プログラムなどを楽しめることをアピールする。

　客室で子どもが寝ているときなどのため、館内にテレワーク用スペースも設置。施設内託児所も利用できる。広報担当者は「利用者はまだ多くないが、スキー場やテレワークスペースが好評」と話す。期間は大型連休を除く5月31日まで。

(北海道建設新聞2020年4月6日3面より)