人類史上最大の発明はお金といわれる。確かにどんな物とでも交換できるお金ほど便利な存在はこの世にない。ただ、無いと困るが有り過ぎても困るのがお金だという。たまには有り過ぎの気分を味わってみたいものだが、そんな機会はとんと訪れない
▼そんな事情も手伝ってだろう。このお金というもの、時に物だけでなく心まで買えてしまうのが怖いところである。「地獄の沙汰も金次第」とはよく言ったものだ。この人たちもお金で関係者の心を買おうとしたとみえる。先週、公職選挙法違反(買収)で東京地検特捜部に逮捕された前法相の河井克行衆院議員と妻の案里参院議員である。地元議員ら90人以上に票のとりまとめを依頼する趣旨で、合わせて約2570万円ものお金を提供した疑いが持たれている。有り過ぎて困ることはなかったようだ
▼昨年7月の参院選で案里議員(広島選挙区)の初当選を確実にしようと大々的にばらまいたらしい。「現生」が飛び交った昔の選挙戦の話を聞くようである。克行容疑者は提供を認めているものの、票の取りまとめ依頼は否定しているそうだ。統一地方選のさなかでもあり、依頼でなく「陣中見舞い」や「当選祝い」であれば買収にはならない
▼とはいえ次期参院選公認候補の案里氏の夫で現職の国会議員がお金を配り歩いているのに、それを単なる「見舞い」などと考える人はいまい。「地獄の沙汰」ならぬ「選挙の票も金次第」か。モラルが低過ぎる。河井夫妻に限らず政治家は忘れないことだ。有権者が怒るとえんま様より怖いしお金でも動かない。